シニアケア

老犬・老猫の終活チェックリスト|7歳からはじめる後悔しない準備

「うちの子はまだ若いから、終活なんてまだ早い」

そう思う方も多いかもしれません。でも、実は犬の56.1%、猫の45.9%が、すでに7歳以上だというデータがあります(ペットフード協会「全国犬猫飼育実態調査」2021年)。つまり、シニア期はもう特別なことではなく、多くのご家庭にとって身近な時期になっているのです。

わたしは動物病院で6年ほど、受付と診療補助、そして会計の窓口を担当していました。獣医師ではありませんが、シニア期を迎えた飼い主さんたちが窓口でどんなことに悩み、何を用意しておけばよかったと感じていたか、たくさん見てきました。

そして、ミニチュアダックスの「チョコ」を16歳で見送った経験があります。今日は、その経験も交えながら、シニア期に備えておきたいことを整理してみます。

「終活」は死の準備ではなく、いまの時間の質を上げる準備

「終活」という言葉を聞くと、身構えてしまう方もいるかもしれません。縁起でもない、うちの子に限ってまだ大丈夫、と。

でも、わたしはこう考えています。終活とは、死を先取りして悲しむための準備ではなく、いま一緒にいる時間の質を上げるための準備だと。

たとえば、かかりつけ以外に夜間救急の連絡先を控えておけば、いざというときに慌てず、落ち着いてその子のそばにいられます。介護用品のことを早めに知っておけば、いざ必要になったときにあたふたせずに済みます。備えがあることで生まれる余裕は、そのまま「いまこの瞬間を穏やかに過ごせる時間」につながっていくのです。

犬の平均寿命は14.62歳、猫は15.79歳という調査結果もあります(ペットフード協会 令和7年〈2025年〉全国犬猫飼育実態調査)。7歳はまだ折り返し前後ということも多く、これからの時間をより穏やかに過ごすための準備だと考えると、少し気持ちが軽くなるのではないでしょうか。

チェックリスト:4つの分野で備える

ここから、4つの分野に分けて、備えておきたいことをチェックリストにしてみました。すべてを一度にやろうとしなくて大丈夫です。できるところから、少しずつ進めてみてください。

【健康】体の変化に早く気づける状態をつくる

  • 健康診断の頻度を見直す(シニア期に入ったら、若いころより回数を増やすことを、かかりつけの先生に相談してみる)
  • かかりつけ動物病院の連絡先だけでなく、夜間・休日対応の救急動物病院の連絡先も控えておく
  • 体重と食欲の変化を、簡単でいいので記録しておく(体重計に乗せるだけ、ごはんの残り具合をメモするだけでも十分です)

体重や食欲のちょっとした変化は、本人にしか分からないサインであることが多いです。わたしも窓口で、「そういえば最近、少し痩せてきた気がします」と、記録があったおかげで早めに相談できた飼い主さんを何人も見てきました。逆に、記録がないと「前からこんな感じだったかもしれない」と、変化に気づくタイミングが遅れてしまうこともあります。手帳でもスマホのメモでも構いません。形式にこだわらず、続けられる方法を選ぶことが一番大切だと思います。

健康診断も、若いころは年に1回で十分だったとしても、シニア期に入ったら半年に1回に増やすことを検討してもいいかもしれません。血液検査の数値は、その子の「いつもの状態」がわかっていて初めて、小さな変化に気づけるものです。だからこそ、元気なうちから定期的に受けておくことに意味があります。

【お金】治療費に備える

シニア期は、若いころに比べて通院の頻度も、治療が必要になる場面も増えていきます。備え方は貯蓄でも保険でも構いませんが、「いざというときにどう対応するか」を決めていない状態と、決めてある状態とでは、気持ちの余裕がまったく違います。

窓口では、治療の相談をしながら、財布の中身を気にされている飼い主さんの姿を何度も見てきました。介護用品についても同じで、必要になってから急いで調べるより、どんなものがあるかをあらかじめ知っておくほうが、いざというときに落ち着いて選べます。補助ハーネスひとつとっても、犬種や体格によって合うものが違いますし、価格帯も幅があります。早めに情報だけでも集めておくと安心です。

【暮らし】日常の環境を整える

  • 段差や滑りやすい床への対策(スロープを設置する、滑り止めマットを敷くなど)
  • 食器の高さを見直す(首や関節に負担がかからない高さに調整する)
  • 留守番のときの体制を考えておく(介護が必要になったときに、誰がどう対応するか)

シニア期になると、これまで問題なかった段差や、フローリングの滑りやすさが、急に負担になることがあります。早めに環境を整えておくことで、その子が自分の足で歩ける時間を、少しでも長く保てるのではないかと思っています。

食器の高さも見落とされがちなポイントです。若いころは気にならなかった首の角度が、関節や首まわりに負担をかけていることがあります。台に乗せるだけの簡単な工夫でも、食べやすさが変わることがあるので、一度見直してみてください。

留守番の体制については、家族が共働きだったり、日中誰もいない時間が長いご家庭ほど、早めに考えておいたほうがいい項目です。介護が必要になったとき、誰が対応できるのか、ペットシッターや一時預かりの選択肢はあるのか。実際に必要になってから調べ始めると、選べる余地が限られてしまうことがあります。

【心の準備】家族で話しておく

  • 見送り方について、元気なうちに調べて知っておく(後悔しないための見送りの選択肢にまとめています)
  • 治療方針や、もしものときの判断について、家族で話し合っておく
  • 写真をたくさん撮っておく

見送り方について考えるのは、気が重いことかもしれません。でも、いざというときに初めて調べ始めると、深夜に涙で画面がにじみながら検索することになりかねません。それについては、わたし自身の体験をこちらの記事に書いています。

家族での話し合いも、後回しにされがちな項目です。もしものときに、どこまで治療を続けるのか、延命について家族の考えが揃っているか。こうしたことは、いざ目の前で決断を迫られる場面になると、なかなか冷静に話し合えません。元気なうちに、一度でいいので、家族の考えをすり合わせておくことをおすすめします。

写真については、「まだいつでも撮れる」と思って後回しにしてしまいがちですが、シニア期に入ったら、意識して多めに撮っておくことをおすすめします。特別なポーズでなくていいのです。ごはんを食べているところ、日向ぼっこをしているところ、そんな何気ない日常こそ、あとになって宝物になります。

チョコのシニア期に、やってよかったこと・やり残したこと

チョコが12歳を過ぎたころから、わたしは体重の記録をつけ始めました。毎日ではなく、週に一度くらいのペースでしたが、これが結果的に、腎臓の数値が悪くなり始めた時期に気づく助けになりました。少しずつ食が細くなっていく変化も、記録があったおかげで「気のせいかも」で片付けずに済みました。

一方で、やり残したと感じていることもあります。夜間救急の連絡先を、きちんと控えていなかったことです。幸い、チョコは自宅で穏やかに見送ることができましたが、もし急変したときにすぐ連絡できる先を事前に調べていなかったら、もっと慌てていたと思います。動物病院で働いていたわたしでさえ、いざ自分の子のこととなると、その準備を後回しにしていました。

だからこそ、この記事を読んでくださっているあなたには、できることから少しずつでいいので、備えを始めてほしいと思っています。

準備ができていることが、その日の後悔を減らす

シニア期の備えは、決して縁起の悪いことではありません。むしろ、その子との時間を大切に思うからこそ、できる準備だと思っています。

すべてを完璧に整える必要はありません。健康記録を少しつけてみる、夜間救急の連絡先を一つ調べてみる、写真を今日は多めに撮ってみる。そんな小さなことの積み重ねが、いざというときの「ちゃんと向き合えた」という実感につながっていきます。

わたし自身、チョコを見送ったときに、準備できていたことと、できていなかったことの両方がありました。準備ができていた部分は、あとになって「あのときやっておいてよかった」と思える支えになりました。

いま、あなたのそばにいるその子との時間が、少しでも穏やかなものになりますように。

よくある質問

終活って、縁起が悪くないですか?
終活は死を先取りするためのものではなく、いま一緒にいる時間の質を上げるための準備です。備えがあることで生まれる心の余裕は、日々の穏やかさにつながります。愛情の形の一つだと、わたしは思っています。
何から始めればいいですか?
すべてを一度にやろうとしなくて大丈夫です。まずは体重や食欲の簡単な記録をつけることや、かかりつけ以外の連絡先を一つ控えておくことから始めてみてください。
かかりつけ以外に、夜間救急の連絡先も調べておくべきですか?
はい、おすすめします。体調の急変は診療時間外に起こることも少なくありません。近隣の夜間・休日救急の動物病院を事前にリスト化し、すぐ見られる場所に控えておくと落ち着いて行動できます。